(5) 遺産分割の諸問題

Q. 遺産分割完了前に銀行預金を引き出すことは可能でしょうか
A
  • 銀行預金の性質
    預金とは、いつでも(普通預金)あるいは一定期間経過後(定期預金)に、顧客が銀行に対して、金銭の引出しを請求できるという金銭債権です。
    単純な金銭債権であるため、相続が発生した場合には、可分債権として当然分割され、各相続人がその相続分に応じて権利を承継する、と考えられています(最高裁昭和29年4月8日判決)。
    この理論を徹底すると、各相続人は遺産である預金について、遺産分割完了前に、単独でその相続分に応じた金額の引き出しをできることになるはずです。
  • 遺産分割の実務
    現実の遺産分割では、銀行預金を遺産目録に明記し、どの相続人に配分するかを決定するのが通常で、遺産分割前に各相続人がその相続分に応じた引き出し請求をすることは稀といえます。
    また、銀行預金を相続分に応じて当然に分割してしまうと、他の財産を分ける際に生じる過不足分を調整することが難しくなってしまいます。
  • 銀行実務
    銀行実務では、相続人の1人がその相続分だけ払戻しを請求しても、通常これに応じません。
    銀行側としては、払戻請求者が真実の権利者でなかった場合に相続人間の紛争に巻き込まれるリスクがあるからです(払戻請求者が法定相続人であっても法定相続分による相続とは異なる内容の遺言や、遺産分割協議の存在を隠して払戻請求したような場合)。
    そのため払戻の際には、銀行側が、相続資格の証明書類(戸籍)に加え、相続人全員による遺産分割協議書あるいは払戻同意書と各相続人の印鑑証明書の提出を求めることが一般的です。
    (相続財産の予防と解決マニュアル)http://free.ac-lib.jp/category9/category1/index1232.html