(5) 遺産分割の諸問題

Q. 相続人の1人が、遺産分割前の不動産を独占的に使用、収益している場合に、他の相続人は明渡請求や損害賠償請求ができますか
A
  • 相続人の1人による遺産の占有
    相続人の1人が、他の相続人の同意なく、被相続人の遺産を独占的に使用、収益することはしばしば見うけられます。この場合、他の相続人は、明渡請求や損害賠償請求をすることができるか問題となります。
  • 明渡請求
    遺産分割完了までの間、被相続人の所有していた遺産は、共同相続人の共有となります。そして、共有者の1人が共有物を勝手に占有、使用している場合でも、各共有者はそれぞれ共有持分権に基づいて共有物の全部を使用する権限をもっているので、他の共有者といえども、全面的にその使用収益を排除することはできないとされています(最高裁昭和41年5月19日判決等)。
    従って、遺産である不動産を独占している相続人に対して、他の相続人は当然には明渡を求めることはできません。
  • 賃料相当の損害金の請求
    遺産である不動産を独占している相続人が、自己の相続分にもとづく使用収益の範囲を超えて利益を得ている場合については、他の相続人は、不当利得ないし損害賠償を根拠に、各人の相続分に基づいた相応の金銭(賃料相当損害金)の支払を求めることができます。
  • 被相続人の生前から被相続人と同居していた場合
    遺産を独占している相続人が、被相続人の生前から、被相続人とその不動産に同居していた場合、不動産の所有関係が最終的に確定するまでの間はその相続人に不動産を無償使用させる旨の合意があったと推認されるため、遺産分割完了までは、他の相続人は、原則として明渡や損害賠償を求めることはできないという裁判例が存在します(最判平成8年12月7日判決)。
    (相続紛争の予防と解決マニュアル)http://free.ac-lib.jp/category9/category1/index1222.html