(6) 遺産分割の効力

Q. 一部の相続人が遺産分割協議において決められた代償金の支払いをしない場合に、遺産分割協議そのものを解除することができますか
A
  • 遺産分割協議条項の不履行
    遺産分割協議は有効に成立したものの、事後的に、一部の相続人がその協議条項を履行しない場合があります。
    例えば、ある相続人が特定の遺産を相続するかわりに、 他の相続人に対して金銭を支払うという分割方法(代償分割)を決定したものの、その相続人が金銭を支払わないという場合が考えられます。
    契約の場合には、債務不履行解除という制度が存在し、不履行を受けた相手側が解除を行って、その契約を無かった状態に戻すということが認められています。
    遺産分割においても、通常の契約における債務不履行と同様に、代償金の不払いを理由に遺産分割協議を解除できるかが問題になります。
  • 最高裁平成元年2月9日判決
    最高裁は、遺産分割は、その性質上協議の成立とともに終了し、 その後は協議において債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけと判示しました。
    すなわち、遺産分割による法律関係の早期安定を重要視して、たとえ分割条項の不履行があった場合でも、遺産分割のやり直しは認められません。
    不履行を受けた相続人が、不履行を行った相続人に対して、民事訴訟でその履行なり損害賠償なりを求めることとなるのです。
    以上の点から、遺産分割において、代償分割のように一部の相続人に債務負担させる条項を設ける場合には、後の不履行による遺産分割の解除が認められないことを念頭においた上で、同時履行条項を設けたり、相当の担保の提供を求めたりするべきでしょう。
    (相続紛争の予防と解決マニュアル)http://free.ac-lib.jp/category9/category1/index1232.html