(6) 遺産分割の効力

Q. 遺産分割に民法総則の意思表示の瑕疵に関する規定は適用されますか
A
  • 民法総則の意思表示の瑕疵に関する規定
    民法総則では、心裡留保、虚偽表示、錯誤、詐欺、強迫といった意思表示の瑕疵に関する規定が存在します。それぞれ法律行為の無効ないし取消という効果を発生させるものです。
    遺産分割も遺産共有状態の解消及び相続財産の取得という法律効果を生じる法律行為であるため、民法総則の意思表示の瑕疵に関する規定が適用されると解釈されています。遺産分割において、心裡留保、虚偽表示の場面は少ないと考えられますので、錯誤、詐欺、強迫について以下考察します。
  • 錯誤
    錯誤は、要素の錯誤についてのみ無効主張が認められます。
    わずかな錯誤、あるいは当事者に重大な過失があった場合には無効主張は認められません。
    法定相続分と大差ない遺産分割協議が成立した場合に、取り分の大小をめぐる錯誤無効は認められないでしょうし、法定相続分から大きく減じられた遺産分割協議が成立した場合でも、それが単なる不注意によって、不動産の価値を低く見積もりすぎていたことが原因であるというような場合には錯誤無効は認められません。
    一方、自分に大部分の遺産を相続させる遺言があったにもかかわらず、それを知らずに法定相続分による遺産分割協議に応じてしまったような場合には、無効主張が認められる可能性が高いといえます。
  • 詐欺、脅迫による取消
    財産の評価を偽って、他の相続人らに実際の価値よりも低い財産を相続させる遺産分割、他の相続人を畏怖させる強圧的言辞を用いて成立させる遺産分割は、詐欺、強迫により取消ができます。
    錯誤無効と異なり、取消権の行使には5年間の消滅時効が存在します。
    (相続紛争の予防と解決マニュアル)http://free.ac-lib.jp/category9/category1/index1232.html